霞猫

最高ファンタジー

2025-05-13

全く、俺には関係ない。
知らない人が列を作って夢を見たふりをして、ポップコーンをかじってる。

「へい、その画面を見てみろよ」
「へー、これはつまらない映画だぜ」

命を削っても、何にももう出てこないよ。
ケツを叩いても小銭の一つも出やしねえ。

もう地獄に落ちてたよ。
この世はとっくに地獄だよ。
死んだ方がマシだよね。

ねえねえ、答えてよ。
それでもいいから歩みを止めないで。
差し違えてもいい。

腹を抑えてうずくまる。
「超ウケる」って指されて、卑屈に笑ってポーズを取るよ。

ゴミ溜めの中で誰が一番綺麗かなんて、
全く意味のないことなのに必死に一歩前に出ようとする。
それはまるで生存競争。
それはまるで太陽に向くひまわり。

さあ、手を伸ばせ。
欲しがるように、さあ、蜘蛛の糸を欲しがるように。

命は1人に1つだぜ。
無駄にしてはいけないぜ。

そう言いながら、お前は部屋の電気を消して布団の中に潜り込む。
そこはファンタジー。
夢はファンタジー。
俺もファンタジー。

みんなで踊ろうぜ。
切り株の周りを囲んで、ぐるぐる回って踊ろうぜ。
猫だってしゃべるし仕事なんて無いぜ。
だってここはファンタジー。
顕微鏡の中のような。
最高だ、最高だ!
涙で世界地図が出来ちゃうぜ。

たまにはくだらないことを言って、
明日のことなんか考えないで、今日のことも考えないで。
昨日のことだって考えない。

もう会えない誰かのことも考えない。
俺は世界に希望を抱けない。

歩行者天国。
鮮度の落ちない死体達は流行りのコーデで身を守ってる。
欲望を置き換えただけの感情をポスト。
それはゴミ箱の色を変えただけなのは知ってた?
お前らのファンタジーはきれいな画角で、俺のファンタジーを悪気無く傷付ける。
物差しを当てた所から痣になる。
最高だぜ、最高だぜ、最高だぜ。
正解は一つしか無いから、椅子を奪い合う。
突きつけられたピストルからはバラでも出るのかい?
安い柔軟剤みたいなケチな匂いのバラだね。
命に物差しを当てて先生気取りだ。
ステゴロ道場。
看板はレインボー。
サブスクの秘密基地。
太陽を見て狂ったもぐら。
地獄へようこそ。

観光地かよ。