霞猫

空と海の間にある喪失

2025-05-13

緑色の壁 トンネルのように 続き 
ぼんやりと 光が
自分の足音が反響し弱い風が吹く 
体にまとわりつき 外が近いことを知らせる

洞窟のような そこの 
入り口に立つ
外の世界はどこまでも続く 
水平線 
青も水も空が溶けて落ちるように

乱反射 のような白い太陽の光
落下した花火の終わり のような 
減速する 一瞬のきらめきが 
瞳の中で黒い影の雨を降らせる

この世の終わりが 例えば
僕の機嫌を取るように形を変えるとしたら
死ぬことに対して何かわずかでも
喜びを見出すことが出来るのだろうか 

この世がほんの微睡む夢の中だったとしたら 
僕たちは一瞬だけ光る星くずの残滓 
その中で出会えたなら 奇跡だね 
瞬きをする間に見失う 
そのくらいの速さなのに
 
愛の奇跡に名前をつけようとして
たくさんの 夜空の星を探す 
灼灼と在る太陽の横で
目がくらみ 本当に見たいものは何だっけ

胸に落ちた言葉が臓腑のうちを回り
血抜きのように瞳は色を失う
失った感情を数える必要は無い
もうここには誰も居ない

求められた姿を選び着飾る
嘘で重くなった舌を飲み込む
わざとらしくレッテルを貼り付けて
臆病なのに懐く小鳥みたい

「ああ夢の終わりか」と
青を見あげながら呟く
ああ夢の終わりかと
海も空も静かで
今は風も無い
目を閉じる