霞猫

日差し

2025-05-13

水中で血の雫がほどけるように
あなたの悲しみに触れることは叶わない

背を撫でるように手のひらで
何か声を探し耳を澄ませるように添える

あなたの悲しみは
夜の中で姿を大きく見せる まやかし
古い悪魔は皆そうさ
あいつら本当は臆病でちっぽけなものさ

僕は知っている
夜空を走る黒い雲が
何も無い低い草原に影を落とし
流れてゆく時間は
痕跡を残さない

愛が心の中で
段々と形を失うのは
あなたのものになるのを望んでいるから

さようなら
さようなら
指切りのように離れる
大切な日々も思い出も何もかも
美しい日々は
手の届かぬ頭上を旋回する鳥
せめて雨雲を知らせておくれ
僕が見えていると知らせて
安心をさせてくれ