霞猫

さよならメリールー

2025-05-14

お別れを言いに来た

彼はそう言うと倒れ伏した
どことなく喜劇みたい
人間の真似している機械人形の
瞳が揺れる

「さよならメリールー
 綺麗な指輪をあげるよ
 私のことを
 覚えておいてくれ」

闇の中手探りで
あなたの輪郭をそっとなぞる
愛しくて恋しくて
何も分からない
目を閉じる

サヨナラの声が聞こえる
燃え盛るシャンデリア

当たり前と思えた世界が
憎しみと瓜二つである事に
気付いてしまったのならもう駄目だ

純粋さに口を塞がれた
細い腰を折るように蹲った
気付いてしまった
何もかも遅すぎた

伝えたい言葉の全て
がらんどうの頭に反響する
あなたが何て言ってくれるのか
永遠に知ることはできない

会いたくて会えなくて
陳腐な偽物の感情を
捧げ注ぐ器はひび割れて
流れ出す命の全て

何も無いこの世界
あなたの居ないこの世界に
お別れを